夢中で人を撮っていた頃もありました。
人物写真を撮るのは怖い。うまく撮れる自信がないし、撮ったからには、撮らせてもらったモデルさんに写真を見せなくてはならないだろうと思うから。しかし、私にも夢中になって人物を撮っていたときがあったことを思い出した。それは10年くらい前のコミケである。
コミケにはコスプレをしている人がたくさんおり、コスプレエリアに行くと、メイクも衣装もばっちり決まったコスプレイヤーさんがたくさんいる。私はアニメやマンガにあまりくわしくないので、何のキャラクターかはよくわからないのだけれど、そのすごさに感動し、声をかけて撮らせてもらっていた。でも私が一番撮りたいのは、クオリティが高いコスプレイヤーさんではなく、セーラー服を着て、ネコミミをつけているようなクオリティの低いコスプレおじさんだった。いやあれは何かのコスプレとかじゃないのかもしれない。お祭りの仮装だったのかも。
クオリティの高いコスプレは、高みを目指した結果、似たものになっていくけど、クオリティの低いコスプレは個性(?)があって面白かった。こちらとしては、コスプレエリアにいるってことは、写真を撮られる覚悟はできているんだろうな、と思ってすっぴんにネコミミをつけているようなおじさんに「撮らせてもらえませんか?」と声をかける。すると「お、おれ?おれでいいの?」などとたいてい驚かれるけど、了承してくれた。
ネットでもコミケの様子はよくアップされているけど、たいていはセクシーな女の子やよくできたネタ系コスプレの写真が多い。クオリティの高い人から低い人まで、いろいろなコスプレイヤーさんを撮らせてもらうと、コミケのコスプレ広場のカオスな状態が再現できるような気がした。
人が多くて疲れるし、同人誌が欲しい、というよりも熱気むんむんでカオスな状態を味わいたいだけだったので、もう何年もコミケには行ってない。あの頃使っていたカメラはコンデジだったけど、若い女性は少なかったので、人の輪ができているような人気のコスプレイヤーさんは「女の子優先で」などと配慮してくれたことを思い出す。ありがとうございました。私が一番撮りたいのはクオリティの低いコスプレのおじさんです!なんて口が裂けても言えなかったわ……。
最近はフルサイズのカメラでの撮影を希望される方もいるとか。私の使っているカメラはニコンのD600なので、一応フルサイズではありますが。カメラの問題じゃなく、撮るのが下手だから、どうしようもないね。
だからしばらくは、人以外を撮ることにしよ。この写真は、映画かなにかのセットなの?というくらい出来過ぎた路地。担々麺うまそう。